【side悠牙】




生徒会室を出て、俺は屋上へと向かった。

鍵は閉められているが、スペアキーを持っている。



「……あの男、ほんと邪魔」



誰もいない廊下で、口から漏れた声。


明らかに杏に好意を抱いている、安堂(あんどう)翔という男。

目障りで仕方ない……杏も、あそこまで好意を向けられて、どうして気づかないんだろう。

ほんと……天然もここまでくると、罪だ。



先程の、杏の泣きそうな顔を思い出す。


俺にいらないと言われて、眉をへの字に垂らし、下唇をかみしめていた。

可愛かったな……いい加減、認めればいいのに。


……あんまりにも頑固だから、ちょっと意地悪したくなっちゃった。



「いい加減、早く俺に堕ちてよ……」



押してダメなら引いてみろっていうしね。

少しーー泳がせてみるのも、悪くない。


今頃、生徒会室で泣いてるかも……

ふっ、それだったら、最高に可愛いのに。



杏の泣き顔を想像して、思わず頬が緩んだ。




【side悠牙】-END-