何時もより低いトーンに、慌てて視線を移した。
その先には、不機嫌オーラ丸出しの、先輩の姿。
「杏、こんなところで男と密会?」
み、密会ってなんですか……。
変な言い方をする先輩に首を傾げると、先輩はイラついた様子で舌打ちをして、こちらへ歩み寄ってくる。
わたしの手を握って、翔くんを睨みつけた。
「杏、行こ」
「ちょっと、先輩……!」
しょ、翔くんと話してたのにっ……!
強引に引っ張ってくる先輩の手を振り払えず……というより、なんだか随分と怒っているみたいだったので、強く言えなかった。
「翔くん、ごめんねっ……!今度話そう!」
「あっ……!」
何か言いたげな翔くんに頭を下げて、大人しく先輩にひかれるがままついて行く。

