【完】愛は溺死レベル



「ねぇ杏、この問題なんだけど……」

「……」

「……杏?聞いてる?」

「……」

「杏!!」

「…っ、は、はい!」

「もう、どうしたのよ?ぼーっとしちゃって……」



わたしの顔を、心配そうに覗き込むタズちゃんに、苦笑いを返す。



「あはは……ごめんね……」



わたし、そんなにぼーっとしてたかな……。


今日、一限目から小テストがあり、宿題の問題がわからないから勉強を教えて欲しいとタズちゃんに言われ、朝早くから二人で教室に来ていた。

授業が始まるまでの一時間、きっちりと勉強をしよう……と、集まったんだけれど……


どうしてか、先輩のことが頭から離れない……。

どうしちゃったんだろう、わたし……。


昨日、映画を観て号泣してしまったわたしを、優しく宥め続けてくれた先輩。

優しく撫でてくれる手の感触が忘れられなくて、ぼうっとしてしまう。