「そっか、まあ楽しめたならよかった」
こんな映画で泣けるなんて、杏は感情が豊かなんだろう。
俺は序盤に生まれた矛盾と、回収されない伏線が気になって、全然話に入り込めなかった。
あの監督、腕落ちたなぁ……この映画が評価されるなんて、世も末だ。
でも、杏が感動できたみたいだから、DVDをくれたことには感謝しよう。
「ほら、泣き止まないと、明日目すごいことになるよ?」
「ふっ、ぅっ……は、はぃ……」
「涙止まんないの?」
こくこくと頷く姿に、加虐心が煽られる。
あー、杏の涙、舐めたい。
泣き顔もたまんない……俺、好きな子はいじめたいタイプなんだろうな。
そんな俺に捕まっちゃって、杏もかわいそう……
ーーま、離してなんて、やらないけどね。
杏は俺の。俺だけのもの。
「よしよし」
優しく抱きしめながら落ち着かせるように背中を撫でた。

