女将さんが去って行ったあと、あたしたちは早速朝食をいただくことにした。
四枚切りよりも、もっと分厚いトースト。表面には砂糖がザラザラとついていて、見るからにおいしそうだ。
食べる前から、口の中が甘い気がする。
大口を開けてかぶりつく。
ふかっと唇を包む弾力。
甘い液が、口の中にじゅわっと広がった。
「ん〜!?ちょっ、カボ!これめちゃくちゃおいしい!!」
幸せをまるごと噛みしめたような味だ。
こんなにおいしいフレンチトースト、久しぶりに食べた気がする。もっとも我が家ではフレンチトーストどころかバターすら塗らないスーパーで一番安い真っ白で無垢な食パンにしか出会えないのだけれど。
夢中でもう一口頬張った。ほっぺたの裏側に、じゅわっと心地よい感触。
「カボも食べてみて…って、なに笑ってんの?」
トーストに口をつけないまま、頬杖をついてあたしを見つめるカボ。
その口元は、これまた別の幸せを噛みしめているかのように優しい弧を描いている。
気にせずにもう一口食べようとしたが、にっこりと微笑みながら見られていてはどうもやりにくい。
「…こっち見ないでよ」
「ダメなんですか?」
「見られてちゃ食べにくいんだってば!!…っていうか、だからなんで笑ってんのよ!!」
トーストを持ったまま、ギロリとカボを睨みつける。
カボは全くひるむことなく、口元からさらに目尻にまで笑みを広げて、あたしに言った。
「…だってなんか、こういうの、幸せだなぁって思って」
トーストを握った指先からまでも、とろりとした甘さが浸透していく。
じわじわと頭のてっぺんから、足のつま先まで。
幸せな色に、染まってく。
「すごく幸せです。好きな人と一緒に、その人の顔を見ながら、おいしい朝食を食べれるのって」
…だから、なんで朝っぱらからこういうセリフを照れずに言えるかな。
カボはずるい。こんなの、真正面から至近距離で撃たれたら。
そんな弾丸、よけきれるわけがない。
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四枚切りよりも、もっと分厚いトースト。表面には砂糖がザラザラとついていて、見るからにおいしそうだ。
食べる前から、口の中が甘い気がする。
大口を開けてかぶりつく。
ふかっと唇を包む弾力。
甘い液が、口の中にじゅわっと広がった。
「ん〜!?ちょっ、カボ!これめちゃくちゃおいしい!!」
幸せをまるごと噛みしめたような味だ。
こんなにおいしいフレンチトースト、久しぶりに食べた気がする。もっとも我が家ではフレンチトーストどころかバターすら塗らないスーパーで一番安い真っ白で無垢な食パンにしか出会えないのだけれど。
夢中でもう一口頬張った。ほっぺたの裏側に、じゅわっと心地よい感触。
「カボも食べてみて…って、なに笑ってんの?」
トーストに口をつけないまま、頬杖をついてあたしを見つめるカボ。
その口元は、これまた別の幸せを噛みしめているかのように優しい弧を描いている。
気にせずにもう一口食べようとしたが、にっこりと微笑みながら見られていてはどうもやりにくい。
「…こっち見ないでよ」
「ダメなんですか?」
「見られてちゃ食べにくいんだってば!!…っていうか、だからなんで笑ってんのよ!!」
トーストを持ったまま、ギロリとカボを睨みつける。
カボは全くひるむことなく、口元からさらに目尻にまで笑みを広げて、あたしに言った。
「…だってなんか、こういうの、幸せだなぁって思って」
トーストを握った指先からまでも、とろりとした甘さが浸透していく。
じわじわと頭のてっぺんから、足のつま先まで。
幸せな色に、染まってく。
「すごく幸せです。好きな人と一緒に、その人の顔を見ながら、おいしい朝食を食べれるのって」
…だから、なんで朝っぱらからこういうセリフを照れずに言えるかな。
カボはずるい。こんなの、真正面から至近距離で撃たれたら。
そんな弾丸、よけきれるわけがない。
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