山田さん的非日常生活

夕食、と聞いて、とたんにお腹が空いてくる。

和風旅館の夕食。一体どんな料理が出てくるんだろう。

普段ならお目にかかれないような食材が何品も出てくるに違いない。


…さあ来い!!懐石料理っ!!刺身!!伊勢エビ!!ズワイガニ!!


ガラリ、ともう一度開いた引き戸からのぞいた、女将さんの満面の笑み。その女将さんが持っていたのは…


「…ツボ?」

「はい!こちら本日の夕食、チーズフォンデュでございます!!」


…チーズ、フォンデュ。


「こちらのお皿にある具材を、ツボに溶かしたチーズにつけてお召し上がりください。特に、このフランスパンは当旅館の料理長が手ごねで作った焼きたてでございます」


…フランス、パン。


「どうぞ、スイスの高原、アルプスの山々を想像してお楽しみください!!」


…アルプスの、山々。


あたしの手にツボを押しつけると、それではごゆっくり、と去っていく女将さん。

その姿は優雅で、品があって、女性の中の女性といったかんじである。


「おいしそうですね!!山田さん!!」


嬉しそうに具材の乗った皿を両手に抱えるカボ。ブロッコリーに、ジャガイモに、ウインナーに、にんじんに、焼きたてのフランスパン。

…わぁ、なんて色とりどりの食卓!!そしてさようなら、短かったけど楽しかった。妄想の中のお刺身、伊勢エビ、ズワイガニ。


うん、わかってる。どうせ庶民は庶民らしくスーパーでカニカマでも買えってことですよね。ホンモノにお会いするとかめっそうもございませんってかんじだよね。最近は中にマヨネーズやらカラシやらが入ってカニカマもあなどれないブツになってきてるしね!!


…うん、あの。



色々疲れてるんで、もうツッコミなしでいいですか?













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