山田さん的非日常生活

「だって、もう旅行が終わっちゃうみたいで寂しいじゃないですか」

「ああ、うん…そだね」


テレビ画面をじいっと見つめる。

見つめているけど、実際頭に内容なんて少しも入ってこない。

本当は体の感覚全部をそばだてて、カボの一挙一動を感じ取っていた。


お揃いの浴衣。あたしより大きめサイズの男物でも、カボの肩周りはピッチリしていて少しキツそうだ。

普段はまるで少年みたいなカボだけど。こうしてちゃんと見てみると、肩幅の広さも、喉仏も。

男のヒトって感じがする。


…って何を考えてるんだあたしは。


チラリと様子を伺うようにカボを見ていたら、目が合った。


「…旅行に、誘ってみて良かった」

「…え?」

「いつもだったらもうお別れだけど、こうして一緒にいれるし」


間近の、満面の笑み。

心臓がドクンと跳ねる。
思わず息を呑む。


カボはずるい。本人は何にもわかってないけど、無意識にあたしの心臓を攻撃しすぎだ。タチが悪い。

無駄に整った顔で、そんな幸せそうに笑うなバカ。


「それに、山田さんの浴衣姿が見れたし」

「────!!」


可愛いですって、照れることもせずサラリと言ってのけるカボ。

…どこのアメリカ人だアンタは。絶対カボん中、日本人男子の血が流れているとは思えない。カボの前世はカボチャなんかじゃなくて、アメリカ人。きっとそうだ。

まるで温泉に入っている最中みたいに、頭の芯が熱くなる。

顔が赤くなるのがわかって耐えきれずに、がばぁっと立ち上がった。


「…の、のど、渇いたかもっ!!あたし緑茶入れるけど、カボもいる!?」

「ありがとうございます、山田さん」


部屋の隅に備え付けてあるポット。カボの隣を通り越してそこに向かおうとした時。


「!!」


慌てすぎて、浴衣の端に足を引っ掛けた。


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