山田さん的非日常生活

**


あたしが部屋に戻った頃には、カボはもうすでに帰ってきていた。

部屋に灯ったオレンジの明かり。

そっと引き戸を開けると、テレビを見てぼんやりしているカボの後ろ姿があった。


…あたしと、お揃いの浴衣だ。


まだ少し塗れている金色の髪は、重力に負けたみたいにへにょっと垂れ下がっている。


「わっ!!」


足音をたてないように近づいてカボの耳元で大声を出すと、カボの体は面白いくらいに跳ね上がった。


「や…山田さん〜!!」

「ははっ、映画の時もだけどさぁ、カボってほんとリアクション面白いね」


あたしが笑うと、カボは珍しく少しすねたような顔をする。

おでこにくっついた前髪のせいで、カボはいつもより幼く見えた。


「何のテレビ見てたの?」

「あ、天気予報です」


テレビ画面には、チッカチッカと点滅するお日様マーク。


「降水確率10パーセントって!明日も晴れみたいです」


にこにこと嬉しそうに説明するカボ。その隣に、少しスペースをあけてちょこんと座る。

いつの間にか姿を消していた、ふすまから差し込んでいた光。


カボとのデートは、いつも昼間が多かった。あたしの親が心配しないようにって、夕方過ぎには家に着くようにしてくれていたから。

この前東山家で夕食をいただいた時は、お父さまやお母さまがいたし。


だから、夕食の時間を過ぎてカボと二人っきりになるのは、これが初めてなんだ。

ドクン、ドクン、と鳴り始める心臓。そんなあたしに反して、カボはいつもとなんら変わらない笑みを浮かべて言った。


「でも、明日の天気とか考えるのはやめにします」

「…へ?」


.