山田さん的非日常生活

真横からカボの声がしたかと思うと、ガッと服の襟首をつかまれた。

一瞬、息が止まる。

隣に残像のように見えた白い馬。気がついたら、いつの間にかカボがあたしの馬に飛び移っていた。

あたしを抱え込むようにして、だらんと放り出されていた手綱を握る。

ぐいっと後ろにそれを引っ張ると、暴走していた姫子はやっとその走りをゆるめた。


…と…止まった…。


息が上がって、今更ながら体が震えてくる。


「山田さんっ!大丈夫ですか!?」

「だ…大丈夫…、ありがと…」


…本気で、死ぬかと思った。

カボが止めてくんなかったら、絶対に途中で力尽きて落ちてた。


それにしても暴走馬に飛び移るなんてなんたる運動神経だ、カボ。

あたしを大震災に合わせたばかりの姫子は、カボの手に頭を撫でられて嬉しそうに目を細めている。


…なんでカボだけ馬に好かれるんだろう。アレか?カボの髪色が金色だから?きっと干し草に間違えられてるんだ。あたしのは黒いからね、エサには見えないしね。


やっと心臓が落ち着いてきて、しがみついたままだった体をゆっくりと起こす。

背中にトン、と、カボの体が触れた。


「良かった…!!」


こつん、て、あたしの肩にもたれかかるカボの頭。


「え…っ!?カボ──」
「…安心しました」


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