山田さん的非日常生活

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"人の恋路を邪魔するものは、馬に蹴られて死んじまえ"…とは言うけれど。


「山田さん…あの」

「…何よ」

「乗馬は、馬に乗るものです」

「…そんなこと知ってるわよ」

「だから…馬に巻きつくものではありません」


11時、乗馬体験開始。

あたしたちに各一頭与えられた馬に、広々とした高原。旅館の裏に、まさかこんな場所があるとは思いもしなかった。

初っぱなから軽々と馬を乗りこなすカボ。

しかもカボに与えられた馬は、毛並みが整った、いかにも!ってかんじの白馬ときたもんだ。

中身はコンビニの130円のかぼちゃプリンが大好物で、近場の福引き旅行で大はしゃぎするような庶民なのに、外見はエセ王子。


…びっくりするほど、白馬が似合う。

これで白タイツに小さな冠、かぼちゃパンツなんてはかせた日にはもう完璧王子だ。

なんて想像して、心の中で笑って…


いるヒマはなかった。


「ぎゃああああああっ!!」


あたしが乗っている馬が、草を食べたかったのかぐりんと下に顔を向ける。

馬の胴体に巻き付いていたあたしは、その反動を思いっきりくらって前につんのめりそうになった。


マジ、無理。馬の上ってこんなに高いもんなの?振り落とされたら骨折じゃ済まないだろ。


「山田さん、手綱を握ってください。馬は大人しいので大丈夫ですよ」

「…カボ、あんた今までに乗ったことあんの?」

「はい!幼い頃に一度。祖父が乗馬が趣味で馬を飼っていたので」


…乗馬が趣味って。この金持ちめ!

あたしのおじいちゃんの趣味なんて、ちびた鉛筆をカッターで削ることなんですけど。


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