カボに手を握られたまま、さっき案内されたばかりの部屋を出る。
ぎゅっと力を込めて握ってみたら、カボはカップにこぼれんばかりに並々と注ぎました、っていうくらいの笑顔を見せた。
…カボがあんまり素直に感情を見せるから、ひねくれ者のあたしの感情が余計に奥に引っ込んでしまうんだ。
あたしがどうも可愛い態度をとれないのはカボのせいだ。ちなみにこの短い足はお母さんの遺伝、低い鼻はお父さんからの遺伝のせいだ。
スッタスタ前を行く女将さんを追いかけて、カボがその背中に声をかけた。
「すいません、今から行うプランって何なんですか?」
…って、電話で予約したくせに内容知らないんですか。普通聞いとこうよ、どこの名所に連れてってくれるのかとか、和室でお茶会ならお腹減らしていった方がいいですか、とか…
「はい、乗馬です!」
キラキラした笑顔で答える女将さん。
そうそう、馬に乗るなら動きやすい服装で行った方がいいですか?とか…
…って。
「じ…乗馬って…え?」
「はい!馬に乗ると書いて乗馬です!!」
…誰も漢字の説明求めてないんですけど。
っていうか、こんな風情漂う和風旅館に来て早速、なんで乗馬なんですか。
そういや女将さんの履いているロングブーツが乗馬ブーツと呼ばれるものだと、今になって気づいた。
ロングもロング、超ロングだ。短足のあたしが履いたら膝まで埋もれそう。屈伸もできやしない。もう一度言う。そもそもこの短い足はお母さんの遺伝、低い鼻はお父さんからの遺伝だ。何だってお父さんお母さんはあたしに残念なとこばっかり受け渡したんだろう。
「あの…女将さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
あたしが生命の不思議について考えを侍らせている間に、カボがもう一度女将さんを呼び止める。
「はい?」
「プランの、乗馬のことなんですけど…」
…おお!さすがのカボでもこれには疑問を持ったのか。
そうだよね、だってわざわざ日本旅館に来て早々何だって馬に乗らなきゃいけない───
「馬の名前は何ですか?」
…いっぺん、馬にでも蹴られればいいのに。
.
ぎゅっと力を込めて握ってみたら、カボはカップにこぼれんばかりに並々と注ぎました、っていうくらいの笑顔を見せた。
…カボがあんまり素直に感情を見せるから、ひねくれ者のあたしの感情が余計に奥に引っ込んでしまうんだ。
あたしがどうも可愛い態度をとれないのはカボのせいだ。ちなみにこの短い足はお母さんの遺伝、低い鼻はお父さんからの遺伝のせいだ。
スッタスタ前を行く女将さんを追いかけて、カボがその背中に声をかけた。
「すいません、今から行うプランって何なんですか?」
…って、電話で予約したくせに内容知らないんですか。普通聞いとこうよ、どこの名所に連れてってくれるのかとか、和室でお茶会ならお腹減らしていった方がいいですか、とか…
「はい、乗馬です!」
キラキラした笑顔で答える女将さん。
そうそう、馬に乗るなら動きやすい服装で行った方がいいですか?とか…
…って。
「じ…乗馬って…え?」
「はい!馬に乗ると書いて乗馬です!!」
…誰も漢字の説明求めてないんですけど。
っていうか、こんな風情漂う和風旅館に来て早速、なんで乗馬なんですか。
そういや女将さんの履いているロングブーツが乗馬ブーツと呼ばれるものだと、今になって気づいた。
ロングもロング、超ロングだ。短足のあたしが履いたら膝まで埋もれそう。屈伸もできやしない。もう一度言う。そもそもこの短い足はお母さんの遺伝、低い鼻はお父さんからの遺伝だ。何だってお父さんお母さんはあたしに残念なとこばっかり受け渡したんだろう。
「あの…女将さん、ちょっと聞いてもいいですか?」
あたしが生命の不思議について考えを侍らせている間に、カボがもう一度女将さんを呼び止める。
「はい?」
「プランの、乗馬のことなんですけど…」
…おお!さすがのカボでもこれには疑問を持ったのか。
そうだよね、だってわざわざ日本旅館に来て早々何だって馬に乗らなきゃいけない───
「馬の名前は何ですか?」
…いっぺん、馬にでも蹴られればいいのに。
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