山田さん的非日常生活


下は古い畳のくせに洋風もどきな机だとか、そのくせ玄関の傘立てはインドのお土産っぽい微妙な像の絵柄だとか、トイレにはどっから掘り出してきたんだっていうたくさん手が生えた仏像だとか。一体我が家は何教なんだ…ってそんなことはどうでもよくて。


「気に入りましたか?」


あたしのゆるんだ頬よりもさらに頬をゆるませて、カボが聞いた。


「…うん、ウチの町内会の福引きもなかなかやるね」


ほんと、景品を選んだセンスのいい町内会のおじちゃんおばちゃんと、カボの強運のおかげだ。


あたしなんて、ガラガラを回せば毎回赤。

人生において当たったもので一番良かったものと言えば、年賀ハガキのお年玉切手である。


ソワソワと浮き足立つあたしたちに、女のあたしでも見とれるような綺麗な顔で、女将さんは微笑んで言った。


「では、どうぞごゆっくり…と言いたいところなんですが、スケジュールの予定で早速プランの方に移らせていただこうかと思います」

「……?」


準備してきますね、と言い残すと、すすす、といったかんじで丁寧に閉じられた引き戸。

…さっきから言ってるプランってなんのことだ?


あたしの疑問に答えるかのように、カボがヒラリと目の前に一枚の紙を持ってきた。


「…それ、何?」

「プランの案内みたいです!えーと…"当旅館には、お客様に楽しんでいただくために、女将が考えたプランをご用意させていただいております"」


電話した時に勧められたんで、ついでに予約しときました!と満足そうに言うカボ。

まるでフリスビーをうまくキャッチできた大型犬みたい。


へぇ、そんな配慮まであるのか…。

きっとこんな和風旅館だから、アレだ。抹茶を立てて飲んだりとか、近くの名所の歴史あるお寺とかを案内してくれる、とかだろう。

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