山田さん的非日常生活

店内に飾られたきらびやかな下着。どれもこれも可愛すぎて、まるで平凡庶民のあたしを威嚇しているようだ。

縮こまっているあたしをよそに、足立はさっそうと店内を歩き回り、めぼしい品を数点絞り込んだ。


…あたしの意見、全く無視で。


「これとかどうよ?超かわいいんだけど!」

「いやいやいやいや無理無理無理無理!」

「なんで?」

「だってソレ三角じゃん!!」

「…は?」


わけがわからない、という顔であたしを見る足立。

わけがわからないのはこっちだ。だって足立が持っているソレは、どう考えても履くものじゃない。


…だって、横が、ヒモでできていらっしゃるんですけど。


「足立?…あのね、庶民の身につける下着というものはこう…正面から見て三角なものではなく、どちらかというと正五角形に近い形をしているものなのだよ?」

「…アンタ普段どんだけ色気ない下着つけてんの」


…色気より実用性と安定感重視なんですあたしは。


店内を心細げに見渡して、肩をすくめる。

勝負下着なんて、自分には全く関係ないものだと思ってた。思ってたっていうか、今も思ってる。


だって、今まで一度も、その、つまり…

カボを相手に、そういうことを考えたことが無かった。


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