無駄に爽やかなオーラが電話越しに伝わってくる。

爽やかやカッコ良さに無駄なんてものは本来ないと思うが、カボの場合にはなぜかそれが当てはまった。


「……何のご用ですか」

「今、朝食でシフォンケーキを食べてるんです」


…知ってますけど。

お母さまの早朝メールでそりゃもうリアルタイムに知ってますけど、あの、っていうか、朝食報告のためだけにこんな朝っぱらから電話してきたのか。


「母が焼いたんですけど、いつもよりふかふかで!!」

「…あ、そう。じゃあおやすみ──」

「また山田さんが来てくれた時にはシフォンケーキぜひ焼かせてね、だそうです」

「………」

「あ!こんな朝から電話してしまってすみません山田さん!!」


…わかってるならかけてこないでください。あたしの枕…じゃなくてシフォンケーキを連呼したいだけなら心に留めておいてください。

布団の中に芋虫みたいに丸まりながら返事をしないで「眠いんですけどあたし」的オーラを出しまくっているというのに、


「山田さん学校では携帯電話使わないじゃないですか、だけど放課後までは待ちきれなくて!!」


電話の奥の方でまだ一人はしゃいでいるカボの声。一体なにが待ちきれないっていうんだ。

空気の読める男というのは、落ち着いて黙って女の気持ちを汲み取ってあげるものだと思うんだけど。


…残念ながらあたしの彼氏はよく言われるKYどころか、KKMKYだ。


.