山田さん的非日常生活

至近距離で見つめられて、あたしの脳内は勢いよく噴火。

被害は近年稀に見る広範囲に及ぶ。


…全く、カボはいちいち回りくどいんだ。そのくせ、たまにあたしのツボをばっちり突いてくるんだから本当にタチが悪い。

さらに悪いことには、同じテーブルを挟んで向かい合っているお父さまお母さまに、ものすごーく暖かく微笑みかけられているっていうこと。


「…えーっと、…ご、ごちそうさまでした!!…あのっ、ぜひ皿洗いでもさせてやってください!」


このままどっかり座ってられる人がいたら、あたしはその人を曾孫の代まで敬います。

あたしが頭を下げると、いいのよいいのよ、とお母さまは慌てたように言った。


「山田さんはお客様なんだから!!そんな皿洗いなんてあたしがするわ」

「いや、僕がするよ母さん」


穏やかにお母さまの肩に手を置いて立ち上がろうとするお父さま。

見た目は海の家の住人だけど、落ち着いた余裕のある仕草はお金持ちならではってかんじだ。

そして金持ちのくせにコンビニのかぼちゃプリンばっかり買っていくあたしの隣のこの男、


「いえ!僕がします!お父さんお母さんは座っておいてください」


…カボは勢い良く立ち上がると、満面の笑みでそう言った。


「いえ、あたしが」

「大丈夫よ!あたしに」

「母さんは休んでていいんだよ」

「僕にやらせてください!!」

「いいえっ!!あたしが──」


ずずーっ。


背後から、何かを吸い込むような音がした。

頭にハテナを浮かべながら、ゆっくりと振り返る。


ずずーっ。


そこにはふかふかの座布団にちょこんと座って、大きな湯のみを手に持ったお手伝いさんの姿が。

あたしの視線も全く気にせず、目を細めると、


ずずーっ。


と、大変おいしそうにお茶をすすった。




っていうか




お前がやるべきだろうよお手伝いさん!!


一体いつ働いてるんだよ梢さん!








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