山田さん的非日常生活

いきなりの不意打ち…といってもかわいいものじゃなくて、鉄のフライパンで後頭部を思いっきり殴られるくらいの衝撃をくらって、フリーズしてしまった。


一体さっきからなんの羞恥プレイなんだろう。


固まった頭で、必死に考える。

そう言えば、どうしてあたしはカボを好きになったんだろう。

だってもともとあたしの好みのタイプは絶対に将来は堅実な公務員、みたいな人だったはずだ。

間違っても金髪の、ふわふわとどこを歩いているかわからないような、突拍子もない行動をする、金持ちのくせにコンビニのかぼちゃプリン好きの、前世がかぼちゃかほうれん草の男なんかではない。


…なのに、どうして。



カボに最初に触れられた日を、思い出した。


しんしんと雪の降る、黒と紫が入り混じったような夜。

サク、とウエハースを割るような足音。

ポン、と頭に触れた大きな手は、暖かくって。


失恋したばかりのあたしの心に、その温度はおかしいくらいにしみた。



子供たちと本気でサッカー楽しんじゃうとことか、

ポップコーンに本気で悩むとことか、

アクション映画でいちいち驚いて飛び上がるとことか、

人にさらりとお姫様みたいですとか言っちゃうとことか、

機嫌がいいと運転しながら唄う鼻歌だとか、


左にだけあるえくぼとか、


山田さんって呼ぶ声とか、


キスしたときの、少し照れた顔だとか。


「えっと…どこが好きって言うか…」


消え入りそうな声になりながら、恥ずかしさのあまり俯いてしまう。俯きすぎて、丸まってダンゴムシになってしまいそうだ。


「そういう風に限定しちゃうのはなんか…違うくって」


頭の中がまとまらない。ああ、自分でも何言ってるのかよくわかんなくなってきた。


「…カボがカボだから、好きなんです」

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