山田さん的非日常生活

「……(混乱中)」

「……」

「………(考え中)」

「………」

「…えっと…うん、お…お父さま、あーん?(諦めた模様です)」


ヤケになったあたしが、隣の口元へフォークを突き出す。しかし、なかなか口を開いてくれないお父さま。

疑問に思って首を傾げる。

するとお父さまは若干頬を染めながら、(っていっても色が黒すぎて認識しがたいが)ためらいがちに小さく口を開いた。



…あの。


自分が決めた決まりに照れてないでくださいこっちが気まずいから。

まあおとといからだから慣れてないですよね、うん、よくわかります!



どうにも流行らなさそうなルールを一通り実行したあと、やっとのことで普通に食事を進められることになった。

あたしが今まで食べていたものは、家畜のエサかなにかだったのかもしれない。

高級品に慣れていない舌には刺激が強すぎるほど、ステーキはおいしかった。まさに口に入れた瞬間、とろけるようにじゅわぁっと広がる肉汁。噛み締めるごとに泣きそうになる。

美味しさと感動をじんわりと感じながらパクパク食べるあたしに、カボのお母さまは微笑んで言った。


「山田さんは本当においしそうに食べるのね」

「え?…そ、そうですか?」

「ええ。見てるこっちが幸せになれそうだわ」


だってこんな高級な料理食べれることなんて、一生のうちでもうないかもしれないんだもん。

カボって小さい頃からこんなものばっかり食べてきたのかなぁ。だったらあたしの手料理なんて全く味覚に合わないことが保証済みだ。

カボと結婚したら、まず調理云々の前に高級食材に躊躇なく触れる練習をしなきゃいけないじゃないか。


…って何言ってんだ自分!別に結婚とか決まってないし!!だってあたしが望むのは平凡な、日常的な暮らし!!去年の短冊にだってそう書いたし!!


「食事をおいしく食べれる子って、私はすごく素敵だと思うわ」

「は、はぁ…」

「で、山田さんは浩一郎のどこが好きなの?」

「は……はぁ!?」

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