山田さん的非日常生活

じゅ〜。目の前の肉から、肉汁が溢れ出て鉄板でぶくぶく言っている。やばい、おいしそうすぎてお腹がキューってなる。

やっとのことで持ってきてくださった紙エプロンを装着し、やれやれと肉を口に運ぼうとした、その時。


「待ってください山田さんっ!!」


カボの手が、あたしの腕を掴んだ。



いい加減


分厚い肉を


食わせろよ



(山田幸子、心の俳句)


「…なに?」

若干声のトーンを下げて、あたしの腕をつかんだままのカボを見上げる。
そしたらこのカボチャ野郎、想像もしていなかったとんでもないことを言いだした。


「山田さん、はい、あーん」



あー………



んん!!??


「な…ななな何言ってんの!?」

慌てふためいて思わず持っていたフォークを落としそうになってしまった。

だっていっつもそんなラブラブカップルみたいなことしたことないし、何より今、ご両親が目の前なのにそんなこっぱずかしいことできるわけがない。

とうとうカボも本格的におかしくなったのか…呆然とするあたしを前に、カボは何かに納得したようにぽん、と手を叩いた。


「あっ、そっか!説明してなかったですね!」

「…は?」


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