山田さん的非日常生活

あそこ、と示された先には木陰のベンチで優雅にティーカップを口元に運ぶ美しい若い女性。

涼しそうに目を細めて、これまた美味しそうにお茶をすする。


…ってオイ!働こうよお手伝いさんっ!!

梢だかなんだか知らないけどなんでアンタの方が雇ってる一家より金持ちっぽいオーラ出してるんですか!


呆れてあんぐり大口を開けているあたし。

目の前には満面の笑みのガングロお父さま。

隣には金色の髪の毛のエセ王子カボ。

バタバタとこちらに向かってくる足音は、きっとあたしとお揃いに着替え終わった年齢不詳のお母さまだ。


来る!きっと来る!!


今度こそドアに衝突するものかと身構えていたあたし。

ズバァン!と開いたドアをよけたのも束の間、飛び出してきたお母さまに押し倒された。


「きゃあっ!?」
「ぶっ!!」


後ろにひっくり返って、ごぉん!と後頭部を強打。本日二回目の、ヒヨコと天使が頭を回る。


「大丈夫ですか山田さんっ!!」


ピヨピヨ、ピヨピヨ。カボの声を耳元に聞きながら、ああ、もうここは日本じゃなければ外国でもない。

きっと天国なのかもしれない…なんて、朦朧とした頭で思った。












.