山田さん的非日常生活

ズバァン!…とドアが開く音じゃない音でドアが開く。

「ぶっ!!」

思いがけないいきなりの攻撃におもいっきりオデコをドアにぶつけた。尋常じゃなく痛い。

ピヨピヨと頭の周りをヒヨコだか天使だかが舞う中で、ドアの向こうからひょっこりと天使が顔を出した。


…天使?


「いらっしゃい山田さんっ!!」

「わぁっ!!」


目の前にずいっと顔を寄せてきたその天使は…そう、天使みたいなフワフワな明るい髪、くりくりした目、あたしにケンカを売ってるのかっていうくらい小柄で華奢な体。

売られたケンカなら買う…じゃなくって、ええっと、この可愛らしい女のヒトは…


「…えーと、カボのお姉さん?」

「母です」



何 で や ね ー ん !



思わず関西弁で心の中でツッこんだ。めっちゃ可愛いすぎないですかお母さん、っていうか年いくつですか、お母さま。

あたしの顔をキラキラした目でじぃっと見つめていたお母さまは、花柄ワンピースに目線を移した。

そのとたん、ただでさえ明るかった表情がぱぁっと輝く。

「山田さんっ!あのね、あたしも花柄のワンピース持ってるの!!青じゃなくて赤なんだけどね!」

「は…はぁ…」

「ほんとお揃いみたいなのよ!!ちょっと待ってね、着替えてくるっ!!」


ええ〜っ!!??
バタバタと高級そうなふわふわのスリッパを踏みならしながら、慌ただしく家の中へ駆けていくカボのお母さま。

初対面わずか30秒。

こんなにもインパクトを与えられたのは、生まれて初めてだ。あの店員さんなんて目じゃない。

カボと出会ってからというもの、あたしの平凡な日常はどこかに飛んでいってしまったみたいだ。

「ええっと…」

「はい」

「元気のいい、お母さまなのね…」

「そんな風に誉めていただいたら母も喜びます!ところでオデコ、大丈夫ですか?」

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