山田さん的非日常生活

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「ありがとうございます山田さんっ!!」


外に出た時には、夕暮れ時をとっくに過ぎてあたりは暗くなっていた。


なんだか疲れすぎて、1日どころか一週間を一気に終わらせた気分だ。

今日のメインはバレンタインだっていうのに、ケーキの存在すっかり忘れてたし。


カボの車の中に戻ると、隠すように置きっぱなしにしていたガトーショコラを渡す。

カボは箱をあけるなり、パァッと顔を輝かせた。


「もったいないですけど…さっそく食べていいですか!?」

「…うん。でもフォークとかないけど…」

「食べれるうちに食べとかないと、いつ心臓発作で倒れるかわからない時代ですから!」

「…物騒なこと言わないでよ」


カボはちょっと形の悪いガトーショコラを一切れつまむと、幸せそうな顔で口へと運ぶ。

足立が監修してくれたのだから、ひどい味ではないと思う。でもやっぱり、こういう瞬間は、緊張する。


…まるで食べられるガトーショコラ自身になったみたいに。


カボはゆっくりと噛みしめると、とろけるような顔でふわり。笑った。


「…おいしい」

「………」

「ずっしりと目の詰まった生地が噛みしめる度に絡みつき、濃厚なココアのほろ苦さと砂糖の甘さ、この絶妙なパートナーが奏でるハーモニーが舌の上で踊りますね!!」

「…グルメ番組のレポーターみたいなコメントをどうもありがとう」


もう一切れに手を伸ばし、カボはよっぽど嬉しかったのか鼻歌なんて歌ってる。

ホッとして、あたしも笑みをこぼした。


頑張って作って良かった。

カボが喜ぶ顔が見れて、良かった。


きっとお菓子づくりの楽しみって、こういうところにあるんだな。…あたしにはまだまだ遠い道のりではあるけれど。


「残りは朝食にとっておきますね!」

「うん」

「一切れはご先祖さまにお供えしときます!!」

「しなくていいから」


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