山田さん的非日常生活

もうどうにでもなれ。

黙ったままのカボにしびれを切らしてヤケになってしまう。

口から言葉がこぼれて、止まらない。


「〜っ、も、もう言い貯めしてやるっ!!すき、すきすきすきすき…」

「…ちょ、ちょっと待って下さい山田さん!!」


ペタッとその場にしゃがみ込んだカボ。


尋常じゃないくらい、耳が真っ赤だ。ユデダコみたいだ。


「いや…あのっ!!嬉しいです、嬉しいんですけどそれ以上は…」

「………っ、」

「その…力が抜けて、立てないので…」


いやだから、あたしは。


「別にアンタの腰抜かそうとしたわけじゃないっつーの!!あたしはカボの留学のことで──、」


あたしを見上げたカボは、まさにクエスチョンマークを表してみました、みたいな顔をする。


「…なんの話ですか?」

「…は、はぁ!?だから留学の話だってば!!」

「……?誰が留学するんですか?」


…誰がって。

口をパクパクさせるけど、言葉が何も出てこない。


誰がって、誰がって…アンタしかいないでしょうが!!

アメリカに行って、勉強のために二年間滞在するって───



その時だった。



カランカランカラン!!


「合格〜っ!!」



「………は?」


鳴り響いたのは、場にそぐわないマヌケな音。

教会の鐘の音じゃなくて、町内会の福引きで一等を引き当てたときの鐘の音だ。


…てか、合格って。


涙でビチョビチョな顔で、ドアの方へ振り返る。

そこから入ってきたのは、カボのお父さま、お母さま、そして梢さん。

福引きの鐘は、お父さまの手に握られている。


.