山田さん的非日常生活

カボは首を傾げて困ったようにあたしを見る。

本当に言うべきことが見つからないみたいだ。


「…血液型とかですか?」

「……は!?」

「いや、万が一の時に輸血できるかどうか知っておかなければいけないかと──」

「そういうことじゃなくって!!」


…輸血って。

たしかに大事だけど、その発想どこから出てくるんですか。


カボから話してくれるまで待つって心に決めたけど、もう無理だ。


ムリだよ。

カボがいなくなっちゃうってわかってるのに、普通になんてやっぱりできない。


…だってカボが、好きなんだもん。

好きで好きで好きで、常識外れな行動しちゃうくらい、バカみたいにカッコ悪くなっちゃうくらい、好きなんだもん。


「なんで…なんで何も相談してくんないの…っ!?」

「え…」

「留学のこと!!カボはあたしと離れること、何とも思ってないの!?」

「…や…山田さん?」

「ひどいよ!!あ…あたし、決めたのに…っ!!」


ボロボロと、また涙がこぼれる。

あたしは今までに何回、カボの前で泣いてしまったんだろう。


…でも今、この瞬間の涙が、いちばん苦くてしょっぱい。


「…好きって、月に一回は言うって…決めてた、のに…っ、」


カボの顔が滲む。

カボの金色が滲む。


目の前にいるカボが今、どんな表情をしているかわからない。


「二年も…っ、アメリカ、に、行っちゃ…ったら、い…言えないじゃない…っ!!」

「………」

「でも…どんな遠くに行ったって、好きなもんは好きなんだから!!」



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