山田さん的非日常生活


勢い良く席を立つと、控え室を飛び出した。

あたしを呼びに控え室前まで来ていた係の人が、走り去るあたしを見て目を丸くする。


「東山様…っ!?」


後ろから叫ばれたけど、振り返らなかった。構ってなんていられなかった。

着の身着のまま、チャペルのドアを押し開け中に飛び込む。

ちょうど前の人の撮影が終わったところだったらしく、そこにいたのは数人の係の人と、カメラマン。


そしてその奥。


…白いタキシードに身を包んだ、カボの姿。


「や…山田さん!?」


ひっくり返ったカボの声。

式場にいる人みんな、目が点になっている。


…そりゃそうだ。純白のドレスを着た女性が入場するはずの場所から、息を切らしたジーンズ女が飛び込んできたんだから。

すっかり上がった息が整わなくて、大きく上下する胸。

カボが心配そうに、あたしの元に歩み寄る。


「山田さん…着替えなかったんですか?」

「………」

「あ…!えっと、頼めば大きいサイズも出してもらえると思いますよ?」

「〜入らなかったわけじゃないわよっ!!」


…なにもこんな時にボケなくても。

カボを睨みつけると、きつく結んだ唇を開く。


…なんかもう、気持ちが高ぶって止まらなかった。


「…ドレスなんて、本当の結婚式にしか着ないんだから!!」



予行演習みたいなの、そんなのいらない。


本物じゃないなら、そんなの必要ない。


「だから…っ!!み…見たいなら、それまでちゃんと付き合いなさいよっ!!」

「…山田さん……」

「…何か言うことない?」

「え?」

「あたしに何か、言っておかなくちゃいけないこと、ない!?」


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