山田さん的非日常生活

「好きなドレスを選んでおいてくださいね」


あたしの心配をよそに、ショーが始まる前に案内してくれたお姉さんが優しく声をかけてくれる。

苦笑いを返しながら、順番が来るまで待つようにと控え室に通された。


…今日はなんか、肩に力が入ってばっかりだ。


一番隅っこのイスに座って、ホッと小さく息をつく。

周りは大人っぽい人ばかりで、あたしはできるだけ肩をすくめて縮こまっていた。


今日見たドレスは全部綺麗だったけど、自分が着るなんて現実味がわかない。

まだ頭の中が整理できないあたしに追い討ちをかけるように、次々とお呼びがかかって控え室から人が減っていく。


「着替え終わりましたらチャペルの方へ。男性も衣装を着てお待ちになっておりますので」


順番が来た一人の女の人が出て行く瞬間、扉の隙間から係の人の声が入り込んだ。


衣装って…もしかして、タキシードのこと?

やっぱりそんなちゃんとした写真撮影なんだ。


落ち着かなくて、とりあえず景色でも見て気分を鎮めようと窓に近づく。


…窓から見えた景色は、ちょうどチャペルの中の様子だった。


ドレスを着た女の人に寄り添う男の人。

女の人の手を、男の人が優しく取る。

二人とも見つめ合い、幸せそうに微笑む。


それは長年の月日を共にし、これからの未来を一緒に歩いていくと決めた二人だけにできる…穏やかで暖かい表情だった。



…息が詰まった。


目に飛び込んだ光景と、心に込み上げる感情に。


あたしにもいつか、こんな時が来るのだろうか。


…来てくれるのだろうか。


ずっとカボの隣にいて、穏やかで優しい時を一緒に過ごせる日が。


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