呆れながら半分ほど残ったおにぎりにかじりついた瞬間、頭にとてつもない衝撃が走った。
「───ゲホォっ!?」
三メートルほど遠くに飛び去ったおにぎり。
…なんてこった。これからが具、っていう一番楽しい頃合いだったのに。
「だだだ大丈夫ですか山田さんっ!!」
「うう…だいじょぶ」
じんじんとしみるような痛みに涙目になりながら振り向くと、向こうの方から赤いTシャツを来た男の子が見えた。
…状況からして、その子の蹴ったサッカーボールがあたしの頭にジャストミートしたらしい。
息を切らして目の前にやってきた男の子にボールを手渡してやると、奪い取るようにあたしの手からそれをむしり取りった。
「ちょ…っ、」
「コラ!!」
そのまま走り去ろうとする赤いTシャツの首根っこをむんずと掴んだ長い腕。
目を丸くして隣を見ると、憤慨した様子のカボがいた。
放せと言わんばかりに暴れていた男の子も、自分を捕らえていたのが金髪長身の男だと知るとギョッとしたように黙り込む。
「ちゃんと謝ってください」
「………カボ…」
ギュッと、どこかを鷲掴みにされたような。
─不覚だ。一生の不覚。
だって、ああ、やっぱり名前「東山浩一郎」で合ってるかもしんないな、だなんて思ってしまった。
「カボ、もういい──」
「おにぎりに、ちゃんと謝ってください!!」
…大阪湾にでも、沈めばいいのに。
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