山田さん的非日常生活

思わず二人、顔を見合わせる。

カボと同時に指差したのは、同じドレスだった。

二人して口元をゆるませ、こみ上げてくる笑いをこらえる。

そのドレスをまとったモデルさんが一番前まで来て、くるりと一回転して見せた。

完璧なくびれがドレスをいっそう引き立てている。


…いつか着るまでに、もうちょっと痩せとかないといけないな。


そんなことを思って息をついた瞬間だった。


「…山田さん、いつか一緒に選びに行きましょうね」


…耳打ちされたカボの言葉。

小さな声で。あたしだけに聞こえる、囁くような声で。


ステンドグラスから差し込む光が色味を増す。

教会のシンボルの十字架が、その光を受けてキラリと輝く。



…あたしの好みのタイプは。



ごくごく平凡な男性。

現実的で、堅実で。将来は公務員になっちゃうような、そんな人で。

生真面目に仕事をして、収入も安定していて、平凡な家庭を築けるような人で。


だからその反対の、簡単に結婚だとか軽く口に出す男は苦手だなんて思ってた。


「……うん、」


唇をギュッと噛んで頷く。


そうでもしないと、何かがこぼれてしまいそうだったから。


「一緒に…選んでね」


…でも今、嬉しい。


知らなかった。


女の子は誰でも、好きな人にこんな話されたら嬉しいんだね。


…嬉しくて嬉しくて、泣きそうになんてなっちゃうんだね。


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