山田さん的非日常生活

「当たりです」


そう言ってにっこり笑うと、カボはあたしの手を引いて式場の中に入っていく。

寝ぼけた頭でなくても、一体何が起こっているのか分からなかった。


…なんで結婚式場なんかに?


頭のてっぺんにハテナを浮かべたまま、ただカボの手に従ってついて行くしかない。

奥に入っていくと、ザワザワと賑やかな雰囲気が感じられた。たくさん人がいるみたいだ。

受付係らしきお姉さんが、あたしたちに微笑みかける。


「東山様ですね。お待ちしておりました、中へどうぞ」


綺麗に引かれたピンクの口紅。

案内されるままにチャペルの中に入っていくと、何列かある席はほとんど満員だった。

思わず口を開けて、辺りを見渡してしまう。


…こんなところ、初めて来た。昔親戚の結婚式に連れて行ってもらったことがあるらしいけど、幼すぎて覚えていないから。


吹き抜けの天井に、誰も触れていないかのような白い壁。

伸ばされた一本の赤い絨毯。

ステンドグラスが、光を薄く通して光る。

深海の青、新芽の緑。


…ただただ綺麗で、言葉が出なかった。


「今からここで、ウェディングドレスのショーがあるんです」

「ウェディングドレス?」

「はい、バレンタインのイベントみたいで!限定で、母がチケットをくれたんです。よかったら山田さんと、って」


隣でカボが耳打ちをしてにっこりと笑う。

いまだに雰囲気に圧倒されているあたしの耳に、ファンファーレが鳴り響いた。


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