山田さん的非日常生活


子どもたちに別れを告げ、カボの車に乗り込む。

運動をして昼食も食べ終えたからか、体が暖かい。

しばらく暖房をつける必要は無さそうだ。


まだ新しかったスニーカーは、一度のサッカーだけですっかり年期の入ったものに早変わりしてしまった。

…まぁ、あたしが転けまくったのが悪いのかもしれないけど。


今からどこに行くのか聞いたけど、カボはふわりと笑うだけで教えてくれない。


「着いてからのお楽しみです」

「ふーん…」


今日のカボは始終ご機嫌で、車内のBGMはやっぱりいつもの鼻歌だ。

この微妙な鼻歌が記憶にすりこまれて、たまに頭から離れてくれない時がある。

…テスト中なんかに頭でループされたらたまったもんじゃない。


助手席に座るあたしの足元で、箱に入ったガトーショコラがあたしを見上げている。

流れる景色をぼうっと眺め、心地よい疲れに促されて瞳を閉じた。



車を止める振動で、ハッと目を覚ます。

寝るつもりなんて全然無かったのに、軽くうたた寝してしまっていたみたいだ。


…あたしのバカ。

運転を頑張ってくれてる横で寝てしまうなんて、彼女として最低じゃないか。


「…うわ、カボごめん──!!」

「ちょうどついたところです、山田さん」


カボが助手席のドアを開け、あたしの手を取って座席から降ろしてくれる。

ぺたんこのスニーカーが降り立ったのは、大理石のような白い床。

見渡すと、白く大きな建物があたしたちを囲んでいる。

ゴーン、ゴーン…中心に位置する鐘が、到着を祝うように鳴り響いた。



…ここは。



「……結婚式場?」


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