山田さん的非日常生活

…これ、絶対カボが作ったよね。

普通なら有り得ない組み合わせに、クスッと笑いが漏れた。


「…おいしい」


シートの端が今にも羽ばたきたいと言うかのように、重りの下でパタパタと動いている。

頬杖をついて、子どもたちと一緒に走り回るカボを見ていた。

こんな真冬だというのにカボの額には汗が滲んでいる。

それを右腕で拭いながら、カボがふとあたしの方を見た。


「山田さん!!」


きっと誰にも真似できない、眩しいくらいの笑顔。

少年みたいに無邪気な顔。

照れて真っ赤になった顔。

大人びた真剣な顔。

何もかも包んでくれるような、優しい顔。


カボはいっぱい、いろんな顔を持ってる。

あたしは出会ってから今日まで、いくつカボの顔を知ることができたんだろう。


あたしは。


…遠く離れてしまう前に、あといくつのカボを知ることができるんだろう。


芝生の上ではしゃいでいるカボたちを見て、なんでかわからないけど…ふと泣きそうになった。

なんでかわからないけど。でも切なくて、嬉しくて、苦しい。


二年後。半年後。一週間後。

それはわからない。明日ですらもどうなってるかなんてわからない。


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