山田さん的非日常生活

半透明な結晶。

サラサラ滑り落ちていくそれを見ていると、舐めてもいないのに口の中が甘く感じる。

ちょうど50グラム分を指した量り。

それにひとつまみだけ、多く砂糖を入れてみる。


ほろ苦いガトーショコラに、甘みを一粒。


おいしいって言ってくれるといいな。なんだか嬉しくなって顔をほころばせていたら、


──パーン!!!!


…オーブンレンジから、してはいけない音がした。


「………」


恐る恐る開けてみると、そこには一面に飛び散ったテカテカした液体──溶けきったバターがびっしりと。

その惨劇とは正反対のいい香りがあたしの鼻をくすぐった。


「…山田、あんた何したの」

「え…だってあっためろって…」

「180度のオーブンモードで焼いてどうすんのよ!?軽くレンチンしろって言っただろうが!!」


飛んでくる足立チョップを交わしたら、回し蹴りをくらわされた。

わき腹を抑えながらボールの中身をかき混ぜる。


朝から始めたバレンタインお菓子作り。


…出来上がったのは、夕飯前の暗くなりはじめた頃だった。













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