山田さん的非日常生活

あたしの小麦粉爆弾の被害を受けて、足立の鼻先が白くなっている。

今度は手を滑らさないように慎重に、小麦粉をボールに入れていった。

180、190、200…あ、ちょっと行き過ぎたかも。

料理とは違ってお菓子は材料を丁寧に量らないと美味しさが変わってくるっていうから。


「山田、頑張ってこいよ」


あたしが撒き散らした粉を布巾で拭いながら、足立が言った。


「アンタこの前も結局渡せなかったんだから。今回はちゃんと渡して、ちゃんと気持ち伝えてこいよ!」

「…う、うん!」

「声が小さい!!」

「はいぃっ!!」


ビシッと姿勢を正して答えると、足立は満足げににんまりと笑った。

足立は何だかんだで、あたしの恋愛を全力で応援してくれる。


バレンタインは、あたしとカボにとっての一つの区切りだから。

あたしの中でカボが必要な存在になったキッカケの日だから。


足立がずっしり詰まった砂糖の袋を、あたしに突きつけた。


「じゃああたしが片づけてる間にバター100グラムに切り分けて、レンジで軽く温めて溶かす!」

「了解です!!」

「そのあとボールにこの砂糖50グラム投入ね!!」


テキパキ出された指示を頭の中で復唱しながら、まな板の上でバターを切り分け、オーブンレンジの中へ。

そして小麦粉が入ったボールの中に、パラパラと少しずつ砂糖を入れていく。


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