山田さん的非日常生活

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「…準備はいいね?」

「……ハイ」

「では、よーい始めっ!!」


時は2月13日、バレンタイン前日。

あたしと足立は台所でエプロンという戦闘服に身を包み、両手を上げて構えていた。

結局、バレンタインにはガトーショコラを作ることにした。

作ったことがあるし、まともに作れた数少ない品の一つだし。それに、今回は。


…今回は初めての、カボのためだけのガトーショコラを作ろうと思ったから。


クリスマスという前例に漏れず、今回も心優しきヤンキーもどき、足立が手伝いに来てくれることになったのだ。

そんな足立の格好はダボダボのピンクジャージにキティーちゃんのつっかけ。しかしエプロンはなぜか純白のフリルエプロンである。

…ギャップがありすぎてあえてツッコめない。


「はい山田!量り用意!!」

「了解です!!」

「小麦粉用意、200グラム投入!!」

「了解です!!」


…まるで軍隊の訓練である。

言っておくがあくまでも、これは乙女たちのお菓子づくりです。


「ひぃっ!!すみません!!」

「なんだ!?」

「小麦粉ひっくり返しました!!」


そしてさっそくやらかしてしまったあたし。

台所一面きれいに、真っ白な雪景色である。

ごまかそうとしてニヘッと笑ったら足立に頭を叩かれた。


…ああ、今日はあと何回叩かれたらケーキが完成するんだろう。

なんかあたしの周りにはサディスト女が多い気がする。


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