山田さん的非日常生活

今までだって、近くにいても不安で仕方なかったのに。


「…だって、あたしとカボじゃ…生きてきた環境が違いすぎて…」


目を見張るような豪邸。

中心部に位置した大きな会社。

会社を継ぐために、海外に留学。


そんな立ち並んだすごい語句たちに、あたしは怯んでどんどん後ずさりしてしまう。


グシャッと。

梢さんが、片手でココアの空き缶を潰した。


「…山田。もう一回さっきの質問してみて」

「え?…あ〜、あの。遠距離恋愛って続くと思──」
「あー無理無理」


…返答速いなオイ。


「そんなウッジウジウッジウジしたことほざいてるようなアンタが遠恋なんてできるわけないでしょうが」

「……そんな人をウジ虫みたいに…」

「浩一郎さんはアメリカでマリモ女から離れて晴れて自由に、周りには金髪美女。ハイ、山田終了。」


…なに勝手に終わらせてるんですか。


手の中のペットボトルは冷たいままだ。指先が痛い。

言葉にならずに吐いた息は、白く濁って夜の闇に消える。


さっきレジの下で盗み見たカボの横顔を思い出して、唇を噛んだ。


「…違う世界で生きてきたから、好きになったんでしょ?」


梢さんの声が、あたしたちの間に落とされる。


「ド平凡な家庭で生まれて、給料もたいしたことなくて雰囲気も微妙なコンビニでバイトしてきた山田だから…浩一郎さんは好きになったんでしょ?」


その気持ちはこれっぽっちもわかんないけど。そう言って梢さんはむくれたようにそっぽを向く。

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