山田さん的非日常生活

瞬時に体が固まった。

完璧に隠れたつもりだったのに、頭がちょっとレジ台から飛び出ていたのだ。


「………」


…どうしよう。

なんて言い訳しよう。っていうか、カボを正面にして笑える自信、ないよ。

体も固まって、思考も停止状態。

かろうじて残っていたらしい聴覚。あたしの耳に、梢さんの声が入った。


「…ああ、アレは」


平然とした表情の梢さん。

梢さん一体何を言うつもりだ。

あたしなんてさっぱり言い訳の一つも思いつかないのに──



「アレは、マリモです」


「………」



…終わった。


終わった、あたしの青春。

せめてもうちょっとマシな言い訳あるだろうよ梢さん。

マリモって。

誰が信じるんだよそんなの。

もうあれだ、ここは自分から「ハイどうも山田でーす!!」のノリで飛び出すしか──


「なるほど!!マリモでしたか!!」


…って。


「そうなんです。そういうことで、気をつけてお帰りくださいね!浩一郎さんっ!!」

「ありがとうございます、梢さんも頑張って下さいね!!」


爽やかな笑顔で去っていくカボ。

放心状態でレジ下に座り込んだままのあたし。


…いや。

いやいやいやいやいや、おかしいだろうよ。

なんで納得しちゃってるんですか。


あたしのところまで来ると、しゃがみ込んだ梢さん。

同じ目線の高さでニッコリ、笑顔を作って言った。


「山田?」

「……ハイ」


完璧すぎる笑みが、逆に怖い。


「何があったのか話してくれるよね?」













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