山田さん的非日常生活

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「……げ」


ウィン、とあたしを迎え入れてくれた自動ドア。

でも一番最初に見えたのは、全くあたしを迎える気のない梢さんの顔だった。


「何しに来たのよ山田」

「…バイトですけど」


…げ。

あたしも同じように心の中で呟いた。

今日のシフト、梢さんとかぶってたのか。

ただでさえ疲れてるのに、さらなる疲れがドッと押し寄せた。


クリスマス直後の

「辞めます。そして代わりに山田が出ます」

発言のあと。


結局梢さんは、辞めずにニコニコマートで働いている。

店長に必死に頼み込まれ、泣きつかれ、渋々踏みとどまるを得なかったらしい。


あたしも裏に入って素早く着替えると、店頭商品の品出しを始める。

すでに大きくスペースを陣取っているバレンタインコーナー。

最近はコンビニでも結構可愛いチョコを置くもんなんだな。

ひとつの箱を手に取って眺める。


「──ぶっ!?」


そんなあたしの後頭部に、強烈な衝撃が走った。

振り返るとニンマリと笑う梢さんが。

…どうやらあたしは、梢さんにチョップを食らわされたらしい。


「何すんのよ…」

「ん?だって目の前にデッカくてもっさりしたマリモみたいなのがあったから」


…あたしの髪型のこと言ってるんですか。


「割ったらマリモ太郎とか出てくるんじゃないかなぁって」


…人の頭かち割ろうとしないでください。

…っていうかマリモ太郎って何。


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