山田さん的非日常生活

もう今日は、何もかも忘れて寝ちゃいたい。どっぷりと枕に顔を埋める。


その時ふいに、携帯電話の着信音が鳴り響いた。

驚いて体をビクッと揺らしてしまう。


…マナーモードにしてなかったんだ。

会社で鳴らなくてよかった───


そっと携帯画面を見てみると、そこに表示されていたのは目下の悩みの種。


カボ。


二文字のカタカナだった。


「────」


携帯を握りしめたまま固まる。

ベッドの上で正座して、でも通話ボタンがなかなか押せなかった。


しばらく鳴ったあと、プツっと途切れる着信音。

不在着信一件の文字が、サブディスプレイの上でチカチカと光る。


しばらくそれをぼうっと見つめて、一人で泣きそうになった。


「無理だよ…」


何にも知らないフリして普通に話なんてできない。

カボのことを責めちゃってる自分が心のどっかにいるから。


いくら今すぐじゃないって言っても。カボは離れちゃっても平気なの?

あたしに何も言わないで、一人で決めちゃうの?


カボの中であたしが占める比率ってどのくらいなんだろう。

あたしのことを一番に考えてなんて言わない。でも。


「あたしのことを一番に考えてる」って言ってくれたら、あたしはすごくすごく、多分ものすんごく嬉しいよ?


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