山田さん的非日常生活

難しい顔で黙り込んでしまう。


「──んむっ!?」


いきなりひんやりしたものが口元に触れる。

お母さまが、たっぷりとアイスをのせたスプーンをあたしの唇に押し付けていた。


「大丈夫よ、山田さん」


驚いて、味わう間もなく喉を通っていくアイスの塊。

目を見開いたまま呆然とするあたしに、お母さまは悪戯っぽく笑った。


「山田さんは繊細な女の子だから、たくさん悩んでしまうことがあるのかもしれないけど」

「………」

「結局のところ、あの子、山田さんのことが好きで好きでしょうがないんだから」


その気持ちが何よりも一番強いんだから。お母さまにそう言われて、ちょっと心がジンとした。

お母さまって可愛らしくて突拍子もない人だとしか思ってなかったけど。

相談できる友達っていうか、ちょっとだけ年上の先輩みたい。


「山田さんのおかげね。浩一郎さんがあんなに嬉しそうだったりイキイキしてるの、初めて見るもの」

「お母さま……」

「この前なんて、山田さんがプレゼントにくれたストラップと一時間くらいじゃれてたわ」

「………」


…あ、それはあんまり聞きたくなかったかもしれないです。


カフェには入れ替わり立ち替わり、スーツ姿の男女がやって来る。

その度に香りの違うコーヒーが運ばれて、店内の空気を心地よいものにしていた。

今日はもう晩ご飯いらないって、お母さんにメールしとこう…そう思いながら半分無くなったプリンに手を伸ばしたとき、お母さまが口を開いた。


「確かに私も…さすがに慶次郎さんがアメリカへ留学しちゃった時は不安だったけど」


ピタリ、と手が止まる。


な…なに?


アメリカって…あの、テキサス・ニューヨーク・ハワイアン・カリフォルニアとかの州がある…アメリカ?


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