山田さん的非日常生活

見とれるあたしに、お母さまは話を続ける。


「最初はお金持ちの気まぐれなのかなって思ったこともあったわ」


…そう。

あたしがお母さまの話を聞いてはじめにビックリしたのは、お母さまが一般家庭生まれだってこと。

てっきりどっかいいとこのお嬢さまだと思ってた。

お母さまのおっとりした雰囲気といい、見た目といい、凡人とはちょっとかけ離れたところがあったから。


「…お母さまは、」


そのことを知った上で、ひとつ尋ねてみたいことがあった。


「不安に思ったことはなかったですか?」


あたしの問いかけに、パフェスプーンを操っていたお母さまの手が止まる。

そして丸い瞳で、あたしを見つめた。


「…山田さんは、不安に思ったことがあるの?」

返された質問。

ゴクッと喉の奥が鳴る。


カボと付き合うまで…カボを好きになるまで、知らなかった気持ち。


嬉しくて泣きそうだとか、

いや、実際泣いちゃったりだとか。

小さなことにイライラしたり、小さなことが気になってしかたなかったり。

あったかくて、優しくて。

そのくせすぐ不安になって、気持ちがグラグラして。


本物の恋に落ちれば、きっと誰もが経験する気持ち。

それにその相手が、大金持ちのご子息だったら。

どうしても芽生えてしまう劣等感を、あたしはどこかで拭うことができずにいるんだ。カボを遠くに感じてしまうんだ。


本当に、あたしでいいのかなって。


本当に、未来はあるのかなって。


今が楽しければいい、なんて思えないあたしは、やっぱり頭が固いのかもしんないけど。


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