山田さん的非日常生活

これじゃあホントにちゃんとした社長みたいじゃんか…

…ってそれが正しいんだけど。


お父さまは腕時計で時間を確認すると、とても残念そうに言った。


「先ほど急遽外に出る用事が入ってしまってね。せっかく来てくれたんだから接客室でお茶でも出したいんだが…」

「いえいえっ!全くお構いなく!!」


すでに気疲れしてるのに、これ以上豪華な場所に足を踏み入れるなんてとんでもない。

あたしが飲むのなんて、100円の時のマックのマックシェイクだけで十分だ。


「…というわけですまないが行ってくるよ!!」

「慶次郎さん!!ちょっと!!」


突如伸びてきた手。

お父さまの腕を掴むと、スネたように唇を突き出すお母さま。

小さい体のどこにそんな力があるのか、お父さまがグンっ!と引き戻される。


「忘れ物届けに来たのに受け取らないまま行っちゃ意味ないじゃないの!!」

「ああ…そうか!すまない」

「しっかりしてくださいよ、もう!!」


…あれ?

もしかして、お母さまがしっかりしてて、お父さまの方が尻に敷かれるタイプなんだろうか。


ちょっと意外だ。

お母さまってほんと少女みたいに可愛らしくて、無邪気なイメージしかなかったから。


でもなんかこの二人、見てて微笑ましい。


「いやぁ、すっかり山田さんが遊びに来るのがメインだと…」

「いいから早く行ってください!!急いでるんでしょ!!」


お母さまに背中を押されて、慌てて去っていくお父さま。

さっき感じた気品やら威厳はどこへやら、なんかあたしんちのお父さんとちょっとカブる。


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