それからもう一つ、決めたこと。
「山田さん」
「……え?」
「…大丈夫ですか?」
よっぽどボケーッとしていたらしい。
心配そうにあたしの顔を覗き込むカボ。
「…あ、いや…カボ、なんかすごいなぁって思って…」
「…?…ああ、そんなことないですよ!!ただあの時は、偶然上手くヒモが巻けたってだけで!!」
「ヒモ……?」
「え?コマ回し大会の話じゃないんですか?」
「………」
…こっちが聞きたいよ。
さっきの会話の一体どこからコマ回しにつながるんですか。
「浩一郎さんはね、幼稚園の頃コマ回し大会で優勝したのよ」
嬉しそうに可愛らしい笑みを浮かべるお母さま。
…しかもそれ、幼稚園の時の話なんだ。
どんな昔にさかのぼってるんですか。
曖昧な笑みを二人に返しながら、コッソリため息をついた。
…カボ、もしかして一番日本語が不自由なんじゃないだろうか。
「山田さん。僕これからちょっと用事があるんで行ってきますね」
「あ……」
「せっかく会えたのに慌ただしくてすみません。ゆっくりしていってくださいね」
あたしが頷くと同時に、忙しそうに去っていくカボ。
その姿はなんだか様になっていて、他のエリート社員の中に混じっても違和感がなかった。
スーツ姿は何回か見たことあるけど、ここではまたいっそう雰囲気が違って見える。
「あの…お母さま。カボって、もしかしてもう働いてるんですか?」
「ううん、働いてるなんて立派なもんじゃないの!今は勉強中っていうか…ちゃんと大学も卒業しなきゃいけないしね」
「へえ…」
「今ちょっとでも慣れといて、卒業してすぐにでもある程度は役に立つようにってことみたいよ」
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