スパーン!!


…と勢いよく開いた教室の扉。

今し方教壇を下り、教室を出ようとしていた先生が固まっている。

そしてクラスメートたちは、みんなイスに座ったまま目を点にしていた。


「お……」


だって、その扉から現れたのは。


「お母さま…うごっ!?」
「山田さーんっ!!」


ものすごい勢い…それはタックルのごとく、あたしに猛突進してきたお母さま。

フリルのあしらわれたワンピースに、相変わらずふわっふわの髪の毛。

少女のようなくりっくりの目。

とても誰かの母親には見えない容姿。

抱きつかれたあたしはイスのままひっくり返り、カチコーン!!と思いっきり頭を打った。

天使だかヒヨコだかよくわからないものが、頭の上をくるくると回る。


…なんかこれ、前と同じ展開な気がするんですけど。


「い…一体どうしたんですか!?」


学校にまでこんなに慌てて来るなんて、何かあったんだろうか。

緊急事態…

も…もしかして、カボが倒れたとか!?

いやいやもしかして、お父さまが庭仕事の草刈り中に間違って自分の指を…

ってヒィィィィ!!ダメだダメ、あたしホラーとかスプラッタ系の映画は苦手なんだってば!!


「山田さん〜!!あっ、もう授業は終わってるのよね!?」

「…さ、さっき終わりましたけど…」


終わったには終わったけど。

クラスメートのみんなは目の前の光景が衝撃なのか、ピクリとも席から動こうとしない。

先生すらもあんぐりと口をあけたまま、あたしとお人形のようなお母さまとの抱擁を見守っている。


お母さまの口から何が飛び出てくるのかと身構えるあたしに、お母さまは言った。


「あのねあのね!この後ちょっと山田さんについて来てほしいところがあって…ウチの会社なんだけどね」

「はぁ……って、ええっ!?なんで東山家の会社に──」


あたし、一体何をさせられるんだ。


.