山田さん的非日常生活

本当に本当に本当にどうしてくれんの。

バカみたいに涙があふれて止まらない。

なんでそんな真剣な顔してんの。

ちょっとカッコいいとか思っちゃうよ。

バラの花束とか普通寒いよ、なのにしっくりきちゃってるよ。

なんでやっぱり来てくれるの。

なんであたしなんかにそんな必死なの。

ねぇなんで、



…なんで、あたしの心をそうやってわしづかみにすんのよバカ。


「…んで…、なんで…、だって別れようって言ったら…山田さんが言うなら仕方ない…みたいに言ったじゃん…っ!!」

「あれは…っ!!…ちょっと拗ねてしまったんです。別れようとか、冗談でも言ってほしくなくて」

「…追いかけて、くれなかった…っ!!」

「…山田さんに嫌われたと思って、放心状態で体が動かなくて」

「連絡っ!!…一本も、くれなかったじゃん…っ、」

「不安だったんです。しつこくして、ますます嫌われたらどうしようって」


真剣な瞳であたしを真っ直ぐに見つめるカボ。

あたしは捕らえられたみたいに、もう少しも動けない。


花束にビッチリスーツに、革靴。ほんとにどっかの王子様みたい。

それに引きかえ、あたしはニコニコマートのダッサイ制服にスニーカー。

少しも釣り合わないけど、自信もこれっぽっちもないけど。


「ぐるぐる考えて…でもどうしようもないくらい、山田さんが好きなんです」


カボがそう言ってくれるなら、少しは自分を好きになれそうな気がするの。


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