山田さん的非日常生活



…あたしが作った、ケーキ。


結局渡せずじまいだったあのケーキは、クリスマス会の会場、足立んちでみんなで食べたのだ。


かぼちゃ味の。


クリスマスイブ前日に、あたしが死に物狂いで作った。



"多分今日、すごい浮かれてるんです"



ふいに目頭が、熱くなった。



"山田さんと来たかったんです"


"僕が山田さんに会いたかっただけですから"



…どうしてあたしは、カボを信じなかったんだろう。

どうして気持ちを疑ったりしたんだろう。


どうして言葉が軽いなんて思ったんだろう。



"山田さんに、早く会いたいので"


"好きな人と一緒にいれるのが、嬉しくて"



いつだってカボは。



自分の気持ちを精一杯、あたしに伝えようとしてくれていたのに。




"山田さん"




うまかったよ。

美味しいよ、って。




「────っ、」




あたしが本当にそう言ってほしかったのは…カボだったの。






「えっ、ええ!?山田、おいっ!どうしたんだよ!?」

「…っ…うー…っ、」


こらえようとしても、込み上げるのを止められない。

そんなあたしに驚いたのか、慌てて困ったような顔をするクラスメート。


「ええ!?え、ごめんっ!!俺なんか悪いこと言った!?ごめんって、どうした────、」



慌てた声が、急にやんだ。




俯いて、滲んだ視界。




差し込んだのは、あたしのものとは別の影。



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