山田さん的非日常生活

バイトの制服のまま連れ出されたあたし。連行されたのは駐車場の隅だった。

梢さんに握り込まれた手首が痛い。本当に手錠をかけられて連行される容疑者みたいだ。

相変わらず美しいという形容詞しか当てはまらない梢さん。表情から見ても苛立っていることがわかる。


…っていうか一体何しに来たんだ?今日は夜勤のシフトにも梢さんの名前なかったし。

もしかして、わざわざ勝利宣言しに来た、とか?

だとしたら本当に大きなお世話だ。二人がいい感じな話なんて、全く聞ける状態じゃない。


「あ…、あの…」

「ア ン タねぇ〜!!」


おずおずと出した声は、梢さんのイラついた声によって塗りつぶされた。


「へ?一体なに──」

「なに、じゃないわよっ!!このニブチン!!」


…一体何だって言うんだ。ニブチンとか初めて言われたんですけど。

今にもあたしに食ってかかりそうな梢さんに対して思わず一歩後ずさる。


「…あの、さ」

「……」

「…聞いたかも、しんないけどあたし…カボとはもう……ダメんなっちゃった、から。…だから、カボの話なら聞きたく──」
「勝手にダメにすんなボケ」


梢さんはあたしをこれでもかっていうくらい睨みつけると、はぁっと息をついてしゃがみ込んだ。


「…昨日」

「え?」

「25日。アンタ、浩一郎さんとあたしが二人で一緒に過ごしたとか思ってんでしょ?」

「そ…そうだけど…」


だって。


"あたしが浩一郎さんと過ごすもの"


そう言ったのは梢さんじゃないか。

しかもカボも梢さんに会うって、ハッキリ。


「んで…」

「?」

「なんでそんなにうまく引っ掛かってんのよ…」


梢さんは悔しそうな顔で唇を噛むと、あたしに向き直った。


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