山田さん的非日常生活

店長は相変わらずやる気なく眠そうで、廃棄になったクリスマスケーキを両手に持って食べていた。

左はチョコ、右は生クリームで口のまわりが悲惨なことになっている。


「おお、山田ぁ。今日佐伯さん30分くらい遅れてくるらしいから」

「わかりました、じゃあそれまでレジ出てますね」


佐伯さんっていうのは主婦のバイトの人だ。子供のお迎えでたまに遅くなることがある。

…バイト一緒なのが、梢さんじゃなくてよかった。

梢さんの勝ち誇った顔を平気で見る自信はまだない。

レジに入ってしばらくしても、お客さんは一向に商品を持ってこない。

暇でも一人しかいないから、もしお客さんが来たらって考えると他の仕事をするわけにもいかないし。

ぼうっと突っ立って、初めてふと、なんとも言えない気持ちがこみ上げてきた。


…ずっと思い出さないようにしてた。笑って笑って、その場しのぎの現実逃避をして。

それにほんのちょっと、期待してた部分もあったんだ。

まだ、終わってないんじゃないかって。


もしかしたらカボが、連絡をくれるんじゃないかって。


でも、携帯は一度も鳴らなかった。


「…いらっしゃいませ〜」


今日初めてのお客さんがレジに来る。あたしはつとめて明るい声を出して、バーコードリーダーを手に取った。


「こちら105円が一点、128円が一点…」


…本当に、もうダメなんだな。こんなに長いこと連絡こないなんて、望みないじゃん。


その程度の、気持ちだった。


30分後、遅れてきた佐伯さんも加わった頃。

そこからちょうど混み合い始め、仕事も忙しくなってきた。今日はなぜかいつもよりお客さんが多い。

バタバタしているうちに、もうバイト終了時刻が迫ってきていた。


「今日多いですね、佐伯さん」

「そうね〜、近くでイベントでもあったのかな……って、あっ!!」


佐伯さんが目を丸くして、コンビニの入り口を見る。

開かれる自動ドア。鳴り響くチャイム音。


「─────」



入ってきたのは、梢さんだった。


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