山田さん的非日常生活

ぼたぼた、バカみたいに大粒の涙が落ちる。

慌てたように立ち上がったカボが、そばに駆け寄ってあたしの肩に触れた。


「〜〜〜っ!!」


パン───ッ!


渇いた音。勢いよく払ってしまった手。

驚いたカボの顔にもらったプレゼントを思いっきり投げつけた。


「…っ!!山田さん──」

「〜もういいっ!!」


言葉も、体も、表情も。

全部自暴自棄になって、止められなかった。


「別れようって言われたら別れるんでしょ!?」


カバンを引っ付かんで席を立つ。

そのまま荒々しく店を出て、真っ直ぐ続く道路を走る。

涙で滲む視界。

さらに慣れないヒールも加わったせいで足元がふらつく。


ずっと先にあった横断歩道まで走って、あたしはやっと足を止めた。

息切れして、肩が上下する。多分顔もぐちゃぐちゃだ。


振り返ると、とても小さく見えるさっきまでいたレストラン。


…あたしとそこまでの間に、人影はなかった。



追いかけてもくれないんだ。


あたし、ヒールだからそんなに速く走ってないよ?

万年徒競走ではビリだったよ?


…ほんとは、これっぽっちも別れたくなんてないよ?


次々にあふれる涙を拭って、駅までの道をゆっくり歩く。

周りにはカップルばっかりで、今じゃさっきまであたしもその一員だったのが夢みたいだ。

カバンから携帯を取り出すと、履歴からある番号を捜す。通話ボタンを押して何コールかしたあと、プツッと繋がる音がした。


「…もしもし」

「はいはーいっ!!こちら足立の携帯でぇ〜すっ!!只今ちょー盛り上がってまーすっ!!」

「………っ、あだ、ち」

「……って、え?え、どした?山田!?」


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