山田さん的非日常生活

頭に浮かんだのは、今日観たばかりの映画の映像。

繰り返し繰り返し、同じシーンが頭をよぎる。


主人公たちが、食い違ってしまうワンシーン。


「もし映画みたいに…いきなりあたしが別れようって言ったら……どうする?」

「────」



お願い。


何言ってるんだって、そんなの嫌だって、言って。


好きなのはあたしだけだって、お願いだから。


カボは無表情で、まるで人形みたいにあたしを見つめて、


「…山田さんが、そう言うなら仕方ないと思います」


でもその目には、あたしはちゃんと映っていなかった。



「…そ……っか、」


声がかすれる。

力が入らない。

カボの顔が見れない。


ねぇカボ、どうして。


嫌だって、言ってくんないの…?


気がつかなかった。無意識だった。


「………っ、」


涙が溢れてぽつり、太ももに落ちていった。


「ど…どうしたんですか山田さん!?」



"山田さんに早く会いたいので"


"すごく嬉しいなぁって。特別な日に、好きな人と過ごせるのが"


"来たかったんです、山田さんと"



"山田さん"






"好きです"






──カボ。


カボは、いっつも簡単に言うよね?

好きとか、幸せだとか。

でも今のあたしには、全部全部、軽く聞こえちゃうよ。

あたしんちはカボんちの何十分の一くらいちっちゃくて。でもあたしの好き、は、カボのすき、より何倍もおっきいよ。

だってカボに別れようって言われたら、ものすごいカッコ悪く泣いちゃうと思うよ。

「カボがそう言うなら」ってアッサリ割り切れないよ?そんないい女みたいな演技できないよ?

でもカボはそうなんでしょ?


別れようって言われたら、じゃあそうしますって言える程度のすき、なんでしょ?


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