山田さん的非日常生活

「たしかにすぐお正月モードになっちゃうもんね」

「お正月も好きなんですけどね」


楽しみにしてる時とか準備してる時とか。その時間は長くて、待ち遠しく感じるのにいざその日が来てしまえば本当にあっという間だ。

今日はきっと、このレストランを出て少ししたらバイバイなんだなぁ。そう思うと、無性に寂しくなってしまう。


…"明日"。


カボの口から出たとき、一瞬心がヒヤッとした。梢さんのことがずっと引っかかってたから。


聞くなら今しかないと思った。

じゃないと明日、あたしは一日中そわそわしてなきゃいけないことになる。

梢さんが現れてから、ずっと心の中がもやもやしてる。カボと一緒にいても、いっつも不安がつきまとってしまうから。

ちゃんと否定さえしてもらえれば。

梢さんの言葉とか、二人で歩いてたこととか、もう気にしない。カボを信じるって、そう決めたんだから。


「カボ」

「はい?」


乾燥した唇をキュッと結ぶ。

勇気を出して、ちゃんと。


「明日。梢さんと…会う?」



信じるって。


カボの言葉だけを、



「はい」



「────」

「梢さんに、何か伝言でもありますか?」



喉元でヒュッと音がした。

でも、声は出なくって。


…なんで?


まるで当然のようにアッサリと返された答え。


…なんで。

普通、クリスマスとか特別な日に別の女の子と遊んだりしないよ?

梢さんはカボのこと好きなんだよ?あのあからさまな態度見たら気づくでしょ?

付き合ってる相手がそれ聞いてどんな想いするか考えないの?


それとも。


「………っ、」



カボにとって、あたしってその程度の存在?



なんで。
なんで。
なんで。


なんで?カボ。


苛立ちと悲しみが同時に込み上げてきて、頭が働かない。さっきまでの嬉しい気持ちが一気にしぼんで、ぺちゃんこになって。

ずっと遠くに、吹っ飛んだ。


「…山田さん?」

「──もし」

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