山田さん的非日常生活

**


映画館は混み合っていた。


一緒に観ると決めた映画は、クリスマスに合わせたように公開されたラブコメ。

ギュウギュウに埋まった館内はやっぱりカップルだらけで、そしてやっぱりカボはポップコーンを買うことを忘れなかった。


「山田さん!見てください、期間限定の味が出てます!!」


あたしの腕を引っ張ると、フード売り場を指差してはしゃぐカボ。

まるで初めて遊園地に来た子供みたいだ。でっかい図体のくせに、目はキラッキラしてる。大人びている外見はいっそ詐欺並みである。


「限定?」

「冬季限定って書いてます!!塩キャラメル味!!」

「………」


…カボにピッタリじゃないですか。

前に映画に行った時、たしかキャラメル味と塩味、どちらを選ぶかについて熱く語られた記憶がある。

その期間限定だとかなんとかいうやつなら悩むこともないだろう。


…っていうか、前から思ってたけど。塩キャラメルだとか塩チョコだとか、なんでもかんでも塩つけりゃいいってもんじゃないと思うんですけど。

次は何がくるか考えられたモンじゃない。塩いちご?塩抹茶?

しまいには塩メロンソーダとか出そうだ。…うわ、それ絶対マズい。


あたしがどうでもいい心配をしているのとは反対に、カボは嬉しそうにポップコーンのカップを隣に置いてニコニコしていた。


映画はもちろんハッピーエンドの、二時間少々で終わり。

外に出たあたしたちが出くわしたのは、月が姿を現し始めた薄暗い寒空だった。

冬は日が暮れるのが本当にあっと言う間だ。でもライトアップしてめかしこんだ街並みは、ずいぶんと華やかでちっとも寂しさを感じない。


カボの予約してくれたというレストランまで歩くことにしたあたしたち。

まだ時間はあったから、道沿いの露店にいくつか寄り道する。

普段は気づかず通り過ぎているのに、こうしてゆっくり歩いてみると案外いろんなお店があるもんだ。


.